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公告・催告をした結果、債権者から異議が出れば、弁済するか、担保をつむか、供託しなければいけないのですが、初めから分割をしても債権者を害するおそれがない場合には、公告も催告もしないで、債権者を害するおそれがないことを証する書面を「登記申請書」に添付すればいいのです。
たとえば、「乙会社に移転する債務につき、債権者から要求がありしだい、当社が連帯保証する」という第三者たる会社の書面でも、登記は受理されるのです。
要するに、商業登記法は、債権者に分割異議の機会を与える理由は債権者保護にあるのだから、その会社分割が債権者を「害する」ことがなければ債権者保護手続きは必要がないという考え方をしているのです。
このことは、合名会社の合併にあたっての債権者保護手続きを定めている第100条の3項但し書きに、「但シ合併ヲ為スモ其ノ債権者ヲ害スルノ虞ナキトキハ此ノ限二在ラズ」と規定していることからも明瞭です。
この条文は、会社分割手続きとしての債権者保護手続きにも準用されています(394条の4第3項)。
つまり、分割しても債権者を害するおそれがない場合は、弁済や担保提供や供託はしなくてもいいと商法は規定しているのです。
そうである以上、「債務ノ履行ノ見込アルコト」を証する書面を会社に備え置けという規定も、債権者保護の規定ですから、その書面が、承継会社乙の弁済能力をも考慮に入れてトータルにとらえてみて、会社分割前より債権者を害することがなければ、会社分割後の甲会社が債務超過になるか、甲会社の債務超過が悪化する内容であるとしても問題はないというべきです。
ただ、「債務の履行の見込み」は、それなりの根拠がなければならないでしょう。
確たる根拠もなく、ただ主観的にそう思っているというのではダメです。
だれからみても納得できるだけの理由や根拠が示されていなければならないのは当然でしょう。
しかし、履行の見込みについて、必ずしも公認会計士の証明文言まで必要だというわけではありません。
私が扱った、分割会社が債務超過であった事例で、会社備え置き書類に、「(その分割会社の)親会社が債権者の求めがあれば連帯保証するから履行の見込みはある」と記載した例があります。
また、履行の見込みについて会社に書類を備え置く必要のない場合もあると思われます。
分割会社の債務と資産を全部、新設・承継会社にもっていってしまう場合です(法人税法第57条2項、法人税法施行令112条)。
私は実際にこのような事例を扱った経験がありますが、債務の履行の見込みあることを示す書類は作成さえしないまま会社分割手続きを終結しました。
もちろん債権者から会社分割無効の裁判は起きていません。
分割後の甲会社の清算といっても、債務超過ではないとすれば、商法上の清算手続きをとればいいわけで、ここで特に論じなければならない問題はありません。
しかし、債務超過であれば清算手続きは終結できませんから、破産か特別清算の手続きをとらなければなりません。
債務超過である会社をオシマイにする手続きですから、破産でも特別清算でも、どちらでもいいようなものですが、いろいろな違いがあります。
先に、破産の方法をとらず特別清算(商法431条以下)の方法をとることにしたのには理由があります。
破産が忌み嫌われていることが大きな原因です。
つまり、破産にするかどうかは、論理の問題のほかに心情問題があるということです。
論理だけからいえば、破産手続きは筋道が通っており、たいへん優れた手続きです。
しかし、依頼人が自分の家は江戸時代から十数代続いた家柄であり、「自分の代に破産の汚名を負いたくはないから勘弁してください」と声涙ともに下る訴えをされることは決してめずらしくありません。
もちろん、そのほかに、破産では裁判所に収める破産手続き予納金が数百万円もかかるのがふつうです(特に会社所有の不動産がある場合)。
特別清算では予納金がいらないこと、破産より手続きが簡単で、費用が廉価ということもあります。
破産では、手続きを進めるにあたり、多数の債権者から同意を得ないかぎり手続きを進められないということはありませんが、特別清算では「協定」(会社消滅のための最終的な弁済計画書のことです)成立のためには債権者の総債権の4分の3以上の同意が必要です。
このため、特別清算では、大口債権者の同意が得られる見込みがあるかという悩ましい問題があります。
そのうえ、特に東京地方裁判所では、特別清算の申立の段階で、特別清算を申し立てること自体についての大口債権者の同意書の提出が要求されるという事実があります。
もちろん、こんなことを要求する条文はないのですが、これが事実です。
私は、どこの裁判所であっても、特別清算の申立をするときは大口債権者(ふつう、銀行ですが)の特別清算申立同意書を添付しています。
手続きの最後になって大口債権者の同意が得られないために手続きが無駄になるのは嫌だからです。
公認会計士や税理士の立場からすると、破産手続きでお呼びがかかるのは申立のときだけというのがふつうです。
しかし、特別清算では、申立段階だけではなく、毎月裁判所に資金繰り表を提出しなければなりませんから、最終段階までお呼びがかかります。
私は税理士の方々には、特別清算人に就任することをおすすめしています。
会社の最終段階を経験することは、なにかと勉強になります。
特別清算について、特に税理士のみなさんに知っておいていただきたいことがあります。
それは、特別清算の実務は、商法の条文とは花離しているという事実です。
法律実務の難しさの1つは、法律の規定と実際に動いている法律実務とはかなり違うことが多いという、なんとも法治国家ならざる頭の痛い点にあります。
その違いの激しさという点で、特別清算はAクラスです。
条文を読んだくらいではわかりません。
条文上は、もちろん特別清算は1種類しかないのですが、実務上、特別清算には、対税対策で行うものと、そうでないものとの2種類があります。
手続きの進め方が違うのです。
税金対策用の特別清算と、それ以外の目的のための特別清算では、派手に手続きが違います。
法人税法基本通達9-6-1または9-6-2の適用を受けることを目的とした申立では、手続きはきわめて簡略化しており、特に債権者の数が1社に絞られているような場合には、裁判所に一度も行かないで、書類のやりとりだけですんでしまうことさえあります。
私は、名古屋地裁豊橋支部に申し立てた事件で、裁判所に一度も行かないですました経験があります。
しかも、申立から手続き終結まで、わずか3カ月間というスピードでした。
つまり、特別清算では経験が大切だということです。
不良債権の処理方法として優れた手続きですし、別に難しい手続きではありませんから、税理士のみなさんも特別清算人として関与されることをおすすめします。
このように、特別清算はいろいろな点で優れているのですが、大きな欠点があります。
それは個人には使えないという点です。
特別清算は株式会社にしか使えないのです。
日本では、中小企業経営者はほとんどが会社の債務について連帯保証させられています。
ですから、会社をつぶして清算しようという場合のほとんどの事例で、放置すれば代表取締役個人もつぶれてしまいます。
十分に人生を楽しんできたから自分はもうどうなってもいい、などという人は、なかなかいないものです。
個人の債務免責を手に入れたいと願うのは人情です。
特に40代、50代であればなおさらです。
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